Beautiful things

6000℃プログラムのメンバーでもある、井上理輝さん(井上製作所 代表)が、佐野恭平さんに作品の制作を依頼することで、大変に魅力的な作品が出現しました。

 

制作者である佐野さんは現在、高松市内で花屋をされています。

花屋でありながらも、花という概念を別のものに昇華する才能を持っている人物であると感じます。

 

ここでは、井上さんが依頼することで生まれた、佐野恭平さんの作品を2019年4月から9月まで毎月紹介してまいります。

井上理輝さんから、佐野恭平さんへの依頼条件

井上さんは、佐野さんに作品を依頼するにあたり、条件を設定しました。

それは、

「毎月第二週の月曜日に新しい作品を届けること」

「“もののあはれ”を感じるものであること」

「価値観を変えてくれるような作品であること。」

「井上製作所の事務所内の指定の位置に飾れるものであること」

「指定の瓶を使ったものであること」

この4つだそうです。


2019 September 7

Artist:佐野恭平

Photographer:鍋坂樹伸

Requester:井上理輝

Curation

おしらさま”をご存知でしょうか。
東北地方を中心に信仰されている家の神さまで、蚕の神ともされています。

 

蚕は家畜化された昆虫。人間による管理なしでは生育することはできません。
そして、繭をつくった蛹は、繭を食い破って羽化することなく、蒸気の熱で乾燥させられます。

 

蚕の繭を手に取ると、それがいったい何であるのかを実感します。
私たち人間は何を望んで、何を糧に、どこへ向かおうとしているのでしょう。
そんなことを考えました。

 

※今回の展示では、作品の一部(繭)を持ち帰ることができます。見学は事前に『井上製作所(香川県高松市)』さんへお問い合わせください。

 

瓶/蚕繭/木台/シャトル織り布(備前壱号)/木片のコピー用紙

 

Curator:よしおかりつこ


2019 JuLy 12

Artist:佐野恭平

Photographer:鍋坂樹伸

Requester:井上理輝

Curation

マルセル・デュシャンのオブジェ「彼女の独身者たちによって裸にされた花嫁、さえも(通称:大ガラス)」をオマージュした作品。

 

ガラス瓶の中には演繹された配列の卵と角砂糖が詰まっています。これは、「身勝手な妄想と女性崇拝のあらわれ」の象徴としてつくられています。また、ライト、蝶、蛾、カブトムシや花もそれぞれ個々に意味を持つ象徴として配置されています。
デュシャンの作品に対する敬意と作家の濃密な考察が感じとられます。

 

20世紀の美術を語る時に外せないデュシャンの作品を、今の時代性と佐野氏の感性によって新しい作品になったことはとても新鮮でした。そして、逆に人間や性という普遍を感じるものでもありました。

 

Curator:よしおかりつこ


2019 June 10

Artist:佐野恭平

Photographer:鍋坂樹伸

Requester:井上理輝

Curation

車椅子に座る人物が抱く瓶の中には一匹の赤いベタ。

この赤いベタがどのようなルーツを持っているのか、交配が複雑なあまり辿ることはできません。


ベタは闘魚として、また美しさを鑑賞するために品種改良が重ねられ続ける魚です。
より気性が荒く、より美しく変化していくベタ。二匹のベタを仕切り越しに会わせると、互いにヒレやエラを最大限に広げ、体を震えさせてに威嚇し合います。

 

車椅子の人物は誰で、ルーツはどこにあるのでしょう。
そして私たちは、どこから来て、どこへ向かって進化していこうとしているのでしょう。
疑問の尽きない作品です。

 

 

Curator:よしおかりつこ


2019 May 6

Artist:佐野恭平

Photographer:鍋坂樹伸

Requester:井上理輝

Curation

本能と、その真逆にある知性を震えさせる作品です。

 

夜の色をした濡れたムール貝の花が咲き、瓶の中にはモルフォ蝶が飛んでいます。

 

私たちが自然と思うもののどれだけが本当の自然なのでしょう。

私たちが命と思っているもののどれだけが本当の命なのでしょう。

 

冗長な説明は野暮です。私たちは本能と知性を持っています。

怖いと感じるまで、この作品を眺めて欲しいと思います。

 

Curator:よしおかりつこ


2019 April 9

Artist:佐野恭平

Photographer:鍋坂樹伸

Requester:井上理輝


Curation

「想像していなかった。」というのが最初の感想です。

 

瓶の中いっぱいに薔薇や蘭などの赤い花が液体と共に満ちています。そして中央にはラナンキュラスの大輪。

 

生き生きとした花弁は本体から離れることによって、死を孕み生々しい命への執着が現れます。

瓶の中の花弁は、生命の内面…まるで人の臓腑のようにも見えてきます。

 

さらに、液体に浸かった花はこの後、時間と共に朽ちていきます。

会者定離、愛別離苦の業がここには在ります。

艶やかで華々しい要素であるはずなのに、胸の内から苦しくなるような作品です。

 

Curator:よしおかりつこ